和歌山市と紀伊半島沿岸部などを結ぶJR紀勢線の橋4カ所が台風12号の豪雨で流されるなど甚大な被害を受け、全線復旧までに最短でも半年かかることが14日、JR西日本などへの取材で分かった。橋の修復は水量の少ない冬場を選んで工事しなければならないためで、同社は「復旧計画は立っていない」としている。熊野市(三重県熊野市)-白浜(和歌山県白浜町)間の約120キロでは当面運休が続く。
紀勢線の和歌山県内部分を所管する同社によると、那智-紀伊天満間の那智川にかかる那智川橋梁(きょうりょう)(那智勝浦町、長さ40メートル)が増水した川に橋脚や橋桁を流され、約26メートルにわたって倒壊した。
また、下里-紀伊浦神間にある江川橋梁(同町、同16メートル)では線路下の土が川の流れでえぐり取られ、周参見-紀伊日置の第3太間川橋りょう(すさみ町、長さ25メートル)では橋脚の土台周辺の土砂が流出した。
土砂崩れによる被害も相次いでおり、白浜-新宮間では線路内への土砂流入が23カ所にも及び、一部では除去が進んでいない。
JR西の紀伊日置変電所(白浜町)も冠水し、復旧は完了していないという。
一方、三重県内を所管するJR東海によると、熊野市駅から少し新宮寄りの井戸川橋梁(同市、長さ42メートル)でも橋脚などが流された。
JR西管内の不通区間(白浜-新宮)の1日平均乗降客数は計約9000人。代替バスが運行されているが、観光の客足にも大きな影響が出ることが予想される。同社は、河川を管理する和歌山県との協議で、工期が大幅に変わる可能性もあるとしている。
私鉄では、南海電鉄高野線の紀ノ川橋梁(和歌山県橋本市、長さ217メートル)で橋脚の一部が最大6センチずれているのが見つかり、橋本-紀伊清水間で運転見合わせが続いている。
JR西によると、橋梁が災害で被害を受けた例では、04年7月の福井豪雨による川の氾濫で、福井市内の越美北線・一乗谷-美山間(9・2キロ)の橋5本が流失、不通期間が2年11カ月に及んだケースがある。また、昨年7月には、山口県を走る美祢線の橋が集中豪雨で流され、1年2カ月にわたって不通となった。
紀勢線と言えば、来夏に新しくデビューを果たす新型くろしおの車両が公表されたばかり。