道路や水道は災害時の特例で業者選定手続きを簡略化し、ほぼ復旧したのに対し、信号機の場合、各県警が「公平性を損なう」として特例適用に慎重になっているため、このような事態に陥っている。
業者を決めるだけで1か月以上かかるケースも多く、この間、死傷事故も発生。「なぜ信号だけ遅いのか」。被災者からは憤りの声が上がる。
岩手県では、津波で倒壊したり制御装置が水没したりして使えなくなった信号機は135か所あったが、このうち復旧したのは24日現在で11か所に過ぎない。
「怖くて道路を渡れない」などの苦情が特に多いのが、津波で壊滅的被害に見舞われた同県釜石市中心部。既に幹線道路は復旧し、車の通行も激しくなったが、信号機は壊れたままだ。
猛スピードで行き交う車を見ながら、信号機が壊れた横断歩道の前で手を挙げ、車が止まるのを待っていた女性(63)は「誰も止まってくれない。車の流れが途絶えるのを待って、走って渡るしかないけれど、怖くて仕方ない」と漏らす。近くの仮設住宅で暮らすが、視界が悪くなる夕方以降は、怖くてほとんど外出できないという。