前代未聞の中断劇は、4‐4で迎えた延長十回表に起こった。
崇徳は無死一塁から先発・阪垣を左翼に回し、松尾を登板させた。松尾が次打者に犠打を決められ1死二塁となると、再び阪垣をマウンドへ戻し、松尾を左翼へ。さらに2死三塁となってから、再び左翼・松尾と投手・阪垣を入れ替えた。
野球規則では、この交代は認められていない。しかし審判は投手交代をコールし、松尾も投球練習を始めた。投手交代となれば阪垣はベンチに下がらなければならないが、この時点で崇徳はベンチ入り選手20人を使い切っていた。野球規則を厳密に適用すれば、没収試合で崇徳の敗戦となる。
この記事を読んだだけでは、何が規則に反しているのか分からなかったので、詳しく調べてみると、投手→左翼手→投手、さらに左翼手へと交代しようとしたがこれが野球規則に違反するということだ。
野球規則3・03にて、同一イニングで投手が守備に回り再び投手となった後は、投手以外の守備にはつけないというルールが定められているからだ。
この規則違反を指摘したのは、審判団ではなく相手側の新庄・迫田守昭監督だった。
さらには崇徳側は「春も試しているし、その時は問題にならなかった」という過去の過ちすら掘り返してしまっていて、つまりはその時も審判団は気が付かなかったということになる。
ちなみに、左翼手→投手→左翼手→投手の交代についてはルール上問題ない。
なぜ、同一イニングで投手が守備に回り再び投手となった後は、投手以外の守備にはつけないという規則が定められているのかについては、詳細は不明だが、打者1人ごとに投手交代が可能になると試合時間が延々と長くなることを恐れての規則なのだろうか。
結局、「審判部としては不手際があったことをおわびします」とアナウンスされ、投手交代不履行として試合再開となった。すでにベンチ入り20人全員を使い切っていた崇徳にほかに選択肢もなかった。崇徳の規則違反として没収試合、新庄の勝ちとなる可能性もあったが、阿蘇品理事長は「日本高野連審判部とも相談しました。教育的な意味合いもあり、そのまま再開した」と説明。
試合は、問題となった選手交代を認めないかたちで続行され、「続投」となった阪垣が初球を中前にはじき返され、新庄が勝ち越し。
新庄が5対4で決勝戦へとコマを進めた。
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